「おまえ、あしたどうすんだ?」
と、会ったとたんにYにきかれた。
学生時代の友人のYは、いまやベンチャービジネスの経営者である。Yの仕事はテレビや新聞でも紹介され、毎日忙しく飛びまわっている。そのYの会社が雑誌を創刊して、記事のひとつを書く依頼が僕のところに舞い込んだ。
取材先である広島県の城下町・福山に行くと、Yもきていて、ヤツは僕の顔を見るなり、
「あしたどうすんだ?」ときいてきたのである。
「どうするって、帰るよ」
と僕は言った。
「なんにも(予定)ないのかよ?」
とY。
「帰るだけだよ」
「じゃあ、〈しまなみ海道〉を渡って四国に行こうぜ」
仕事もしてないのに、この男はいきなりあしたの遊びの誘いをしているのだ。
今回の上野歩さん「月いちエッセイ」は傑作選といたしまして、バックナンバーよりわたくしオススメの作品をグっと掘り出してお届けいたします。
それでは、本編の最後でまたお会いしましょう。どうぞ〜。