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ぴー吉 上野 歩 /
第204回 日帰りバスツアー(16)〜三島のうなぎ編〜・・・P2

挿絵

 観光バスで三島の町を走ると、うなぎ屋さんの看板が目につく。その前には大なり小なり行列ができている。
 そして、ひときわ賑わっているのが、本日のツアーで訪れた安政年間創業の老舗「桜家」さんである。
 2年前に訪れた時にもすごい人だかりができていたが、今日はまたさらに凄まじい。そんな中、ツアー客の特権で待たずに2階の座敷に案内される優越感に浸った。
 天井の板は桜の木だろうか? 燻(いぶ)したように黒くくすんだ色合いに風情を感じる。
 座卓に着くと、すぐさま出来立ての温かいうな重が運ばれて来る。僕は仲居さんをつかまえて、
「サッポロと景虎」
 と、勝手知ったるで献立も見ずに中瓶のビールとお酒を1合注文する。
「それと、肝(きも)の時雨煮(しぐれに)ね」
 しかし、外では300人待ちとのことで追加の料理は受け付けてもらえなかった。
 前回来た時には、肝の時雨煮を肴に酒を飲んでうなぎが焼けるのを待ったのだが、仕方ない。こちとらツアー客の身である。あまり我がままも言えぬ。今回はうな重がすぐに運ばれてきたのでも分かるように、お店は大勢の客をさばけるように、さらに効率化がなされていた。

 ビールが到着するまで、うな重のフタを開けずに待つ。まずはぐびりと喉を潤してからうなぎを口に入れたいのである。
 来た! サッポロ生の黒ラベルはご当地仕様で伊豆の踊り子のイラストが描かれている。僕は、コップに注ぐと、ひと息にあおり、やっとうな重のフタを開けることができた。1尾半を使っているという2枚のうなぎのかば焼きが重箱いっぱいを占めている。
 箸で飯と一緒にひと口運んだうなぎは、ふっくらとやわらかい。タレ浸(びた)しの市販のかば焼きとはワケが違う。蒸してはあるが、焼き魚の香ばしさを感じる。
 ふた口目からは山椒(さんしょ)を振る。ここの山椒は香りがいいし、青々とした色も清々(すがすが)しい。もちろん、口の中でしびれる。
 片口に酌(く)まれてきた越乃景虎はすっきりとした飲み口がかば焼きに合う。
 最近はお店で「酒を冷やで」と言っても通じなくなった。「燗をしない酒」を注文する時には「常温で」と言うことになって、誠に風情がない。しかし、桜家さんでは、仲居さんに「冷やですか?」と訊かれ、大いに気分がよくなった。
 来た酒はちょっと冷やしてあったけど、この陽気なのでますますいい。……だけど、やっぱりこの店でも「冷や」の言葉の使い方が違うということ?
 肝吸(きもすい)に入ってる豆腐が甘いなと思ったら玉子豆腐だった。
 ご飯のほうにだけタレを追加して、酒を口に含みつつうな重を堪能する。
 ぬか漬けのきゅうりが浅漬けふうなのにもかかわらず酸っぱいのは、ここのぬか味噌が酸っぱいのか? それともよそでつくらせているのか? いずれにせよ、このぬか漬けもいい肴である。

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