上野歩が書き下ろし小説『就職先はネジ屋です』(小学館文庫/¥730+税)を刊行しました。当ホームページ《上野亭かきあげ丼》の板長ことイラストレーター・ふじたかつゆき画伯にプルーフを読んでもらい、トーク形式で内容を紹介していきたいと思います。
まずは(前編)です。
・ヒントはテレビ番組から
ふじた:みなさま、こんにちは。『就職先はネジ屋です』刊行にあたりまして、恒例の上野さんと対談でございます。よろしくお願いいたします。
上野:こちらこそよろしくです。
ふじた:まずは本作で「ネジ」を題材に選んだきっかけを教えていただけますか?
上野:いつも、小説の題材とは、思わぬところで出会います。読んでいた新聞だったり、雑誌だったり、ほかの件で出かけた取材先だったり。今回はテレビでした。なんの番組だったのかは覚えていません。その番組自体をしっかり観ていたわけではなくて、「緩まないネジ、骨折した骨をつなぐネジ、橋脚を地球につなぐネジ……」そうしたナレーションがなんとなく耳に届いてきたんです。その瞬間、あ、これイケるな、と。
ふじた:それは本当に偶然で?
上野:まったくの偶然です。その後、別の取材であるネジ屋さんと偶然に出会った。そこで、ネジ屋さんとネジ商社さんの関係を聞いて、ストーリーのヒントを得たんです。
ふじた:うおー、やっぱりアンテナの感度がすごいなあ。