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/ 上野 歩
monthly essay / ueno ayumu

ぴー吉 第93回『日帰りバスツアー(4)〜夏の終わりのミステリー編〜』

挿絵 空には秋の気配を感じさせるうろこ雲が広がっていた。朝の空気は涼しく心地よい。それでも、日中は暑くなりそうだった。
「おはようございます」と言って、添乗員さん(女性)に名前を名乗る。
 体格のいい添乗員さんが、「ウエノさんですね」と言って、参加者名簿をチェックし、「きょうは東京の暑さを脱出ということになるんでしょうか? まあ、どこに行くかは言えないんですけど。ぐふふ」と、丸々とした頬っぺたをゆるませて意味ありげに笑った。
 乗り込んだ観光バスが外環に入ると、こんどはベテランのガイドさんが、「さあ、バスはどちらに向かうのでしょう? どこに行くかは言えないんですけど」と老練な口振りで言って、「ぐふふ」やはり意味ありげに微笑む。
 きょうは、『謎の日帰り福袋ツアー』というのに参加したのである。
 どこへ行くかは当日のおたのしみというわけだ。
 さいしょのトイレ休憩で立ち寄ったインターチェンジを過ぎると、車内で朝食のサンドイッチ(卵、ハムとチーズの2種)が配られた。
 車の運転をしないので、もっぱら旅行は電車を利用している。だから、たまにドライブインを利用してみると、その充実振りにおどろかされた。清潔なトイレはもちろん、ベーカリーも有名店が入ってるし、お土産、お弁当もずらり。飲食店もファストフード、レストランがバラエティに軒を連ねていて、まるでデパ地下とコンビニを合わせたみたいな雰囲気だった。バスにもどれば、朝食が支給されるのは知っていたけれど、思わず買い食いがしたくなり、豚の角煮をサンドした飲茶バーガーをぱくついてしまった。

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