少年時代、周囲の子が、切手や仮面ライダーカードの収集に熱を上げていても一向に関心がわかなかった。
それでも、アレは集めていたか――英ブリテン社製の動物フィギュア。小学生のころ、浅草の松屋デパートに週末ごとに通っては、1つ2つと買い集めたものだった。ただし当時はフィギュアなどという言葉はなかった。僕は、それを「ミニ動物」とか「動物の人形」と呼んでいた。実家に小学館学習図鑑シリーズの動物図鑑があって、そこに出ている動物ならたいていそろえたと思う。
合成樹脂の成型品を細かい部分は1コ1コ手で彩色しているのだろう。だからケースにならんで売られている動物たちは、カモシカならカモシカ、ダチョウならダチョウで個々に表情がちがっていた。
小学校のおなじクラスに、僕のほかに1人だけこれを集めているやつがいて、そいつの家に行くと、クッキーの缶にたくさんのミニ動物がぐちゃっと入っていた。愛があるんだか、ないんだか、わからないコレクションだったが、それでも彼は、この収集品の主役たる百獣の王ライオンをこれまで3頭も買っていながら、どれも表情(つまり彩色の具合)が気に入らないらしい。彼は僕の持っているライオンがお気に召して、自分の3頭と交換してくれないかと提案してきた。僕がことわると、メスライオン3頭もつけると言ってきた。気に入らないなりにライオンを律儀にツガイにしているところがおかしかったが、もちろんことわった。
じつは、このミニ動物たちは、いまでも仕事部屋のガラスケースのなかにならんでいる。木やブッシュ、家畜用のケージなどもあって、なかなか壮観である。かつて、オス、メス合わせて6頭との交換をせまられた自慢のライオンはいまも中央奥にいて、他の動物たちを睥睨(へいげい)している。
地震があるたびに、動物たちは倒れてしまう。そのたびごとに、ならべ直すわけだが、そんなときにはすこしばかりヨロコビを感じていたりして……。
そうして、このコレクションを眺めながら、ときどきウィスキーグラスを傾ける――なんてことはしていない。あくまで、これらは遥かむかしの、少年時代の僕が集めたものであって、なんていうか、いまもただ持っているだけである。
