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/ 上野 歩
monthly essay / ueno ayumu

ぴー吉 第106回『人生のボーナス』

挿絵 前回は、熊本でセスナに乗った話を書いたが、こんどは琵琶湖(びわこ)でジェットボートに乗った。
こうなってくると、なんの商売だかわからなくなってくる。
 僕はさいしょ、取材相手の“人物”がジェットスキーに興じる姿をカメラマンが撮影するのを浜辺からぼんやり眺めていた。そしたら、「ハイ」とライフジャケットを渡された。
「いやー、いいですよ。ムリ、ムリ」と僕は言って、手をひらひらさせた。さいしょは冗談かと思った。クルマの免許も持っていない僕がジェットスキーなんか操縦できるはずがない。
 そしたら“人物”が、「いや、コッチじゃなくて、コッチ」と、ボートのほうを指差した。「ソッチ(ジェットスキーのこと)だと濡れるから」
 濡れるとか濡れないとかの問題ではないのだが、ともかく僕は“人物”が運転するジェットボートに乗せられ、11月の琵琶湖上を100キロの猛スピードで走るという経験をした。ボートが急旋回するたびに、「わ、ひっくり返る!」と思ったものだ。
 もうジェットコースターなんてもんじゃなかったね。身も心もすっかり凍りついて、ボートから降りるときには足元がおぼつかなくなっていた。

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