9時過ぎに宿を出て、ふたたびクルマで1時間半ほど移動、中仙道・妻籠宿(つまごじゅく)に向かった。妻籠宿のことは、昨年、あるご婦人の口から何度も聞いていて、今回、白川郷を訪れた帰りに寄ってみる気になったのだった。
仮にMさんとしよう。Mさんは、昭和23年に妻籠中学校に赴任した。そこで、島崎藤村の小説『新生』で描かれた「節子」のモデルとなった人物「島崎こま子」と出会った。その面影を長年胸にとどめていたMさんは、『新生』と「こま子」をめぐる研究書を書いていた。
時代劇さながらの旅籠(はたご)が軒を連ねる妻籠宿を歩いていると、〔巨大ギンモクセイ〕の案内板があって、脇道に入る。細い石段をのぼると、たしかに〔県天然記念物〕の表示のある庭木の大きなギンモクセイがあった。この時期、もちろん、花はない。
さらに石段を登りきると、古い木造校舎のある学校のまえに出た。旧妻籠小学校――ここが、Mさんの赴任した学校なのだ。当時、生徒がすくなくて、小・中合併だったという。
