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ぴー吉 上野 歩 / イ  第107回『宿場町』・・・P3

挿絵  ふたたび宿場のメインストリートにもどり、宿場のはずれのほうまで歩いてみた。
 そこには鉄人28号の秘密基地のような赤茶色の外壁の発電所が建っていた。関西電力妻籠発電所。昭和9年竣工のこの発電所は、いまだ現役である。
 古い西洋建築鑑賞を趣味とするウエノは、傍らの橋から発電所の蘭川(あららぎがわ)に面した側を眺望する。きょうは晴れて暖かい。
 橋のたもとに八百屋さんがあって、覗いてみた。干しイモ、ギンナン、タラの芽を買う。勘定を払うときに、「きのうはちょっと雪がちらついたよ」とお店のご主人が言った。「温(ぬく)いばっかりじゃなくて、寒太郎がこないと」
 宿場の中央に戻る途中、笹飴を売っているお店があって、1袋求めようとするが誰もいない。声をかけると、ガラス戸の向こうでコタツに入っていたおばあちゃんが出てきた。「近くの山でとれたもの」と言って、くま笹の葉の粉茶をいれてくれる。
 土間にある椅子に腰をおろし、渋くて甘い粉茶をすすりつつ、宿場町を行き交うひとびとをのんびりと眺める。
 馬籠(まごめ)峠を越えてクルマで20分ほどのところにある馬籠宿で昼食をとった。蕎麦ととろろ飯の定食である。
 馬籠宿は、妻籠とはまた趣の異なる坂の宿場町だった。美しい石畳の坂道を上ってゆくと、陽だまりで福寿草が咲いていた。

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