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ぴー吉 上野 歩 / イ 
第117回『西洋館のある風景』・・・P2

挿絵  しかし、こういう嗜好を持ち合わせているヒトは世に少なからずいるようで、後年そうした欲求を満足させるべく出版された書物も手にし、同好の士とも出会ってきた。
 ひと口に洋館好きといっても、いろいろなタイプがある。病院を専門にめでる者、刑務所マニア、なかには廃屋にひたすら欲望を感じる者もいる。
 僕についていえば、物件の種類はともかく、なによりその土地で、いまも実際につかわれている建物に惹かれるのだ。

 冬のある日、目白駅で山手線を下車する。さきほどから降ったりやんだりしている氷雨で濡れた急坂を上り、目白台地の高台上に出た。
 駅前の喧騒が嘘のような閑静な住宅地の通りの突き当たりにその建物はある。
 日立目白クラブ。
 白い壁に囲まれた白亜の西洋建築である。壁に沿って歩くと敷地がかなり広いことがわかる。壁の向こう側には幾棟かの建物がたたずんでいた。
 その一棟に〔第三寮〕という看板が掲げられているのが見える。かつて学習院の寄宿舎だった時の名残であろうか? それとも日立製作所の所有となって以後に付けられたものか?
 なにか集会があるらしく着飾った男女(家族連れも)が建物のなかに入ってゆく。結婚式かと思ったが、時節柄クリスマスパーティーかもしれなかった。
 冬の宵闇のなかで窓からこぼれる明かりがあたたかだった。
 やはりいまも大事につかわれている建物はいい。
 近くに目白ヶ丘教会がある。こちらも白い外壁の建物だ。
 ふたたび坂を下り、JRの線路沿いに池袋まで歩くことにする。道はやがて線路から離れ、住宅地へと入ってゆく。
 僕はその道なりに歩く。せっかくだから近くにある自由学園明日館を見て行くことにしたのだ。
 大正時代にフランク・ロイド・ライトが設計したゆるやかに横に広がるプレイリースタイル(草原様式)の建物は、やはり今宵なにかのイベント会場となっているようで、すべての窓から煌々と明かりを放っていた。

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