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/ 上野 歩
monthly essay / ueno ayumu

ぴー吉 第122回 My Favorite Movies−3.『大統領の陰謀』
       (1976年、アメリカ)  〜ジェーソン・ロバーツの靴の裏〜

挿絵 『大統領の陰謀』はストーリーが理解できない映画である。何度観てもわからない。
 公開当時、劇場で買ったパンフレットにも「あらすじ」が記されていないのは、これはやはりストーリーが理解できていないからではないだろうか、と思ったものだ。

 ウォーターゲート事件を取材するワシントン・ポスト紙の2人の記者の姿を追う本作。その過程で登場するのがアメリカ政界の人物名とその複雑な関係であり、それらの表面的な動きと裏の動きであるからワケがわからなくなる。
 当時の大統領リチャード・ニクソンは、ワシントン・ポスト紙を端緒とした事件報道により、けっきょく辞任に追い込まれるわけだが、もちろん2人の記者と大統領が対面するような場面などないし、ニクソンが記事を眺め苦渋に満ちた表情で新聞を破り捨てるといった場面もない(実際にそんなことしたかどうか知らないけど)。つまり、これを2人の記者を探偵役としたミステリー映画として見た場合、犯人側の動きが描かれないので、一方向的でやや緊迫感に欠けてしまう。
 また、そもそもがウォーターゲート事件そのものの全貌が描かれることなく物語も終わってしまっている。なんというか、映画的カタルシスが得にくい作品なのである。
 ストーリーがわからない、と言ったが、最初から物語らしい物語がないのが『大統領の陰謀』なのかもしれない。
 で、つまらないかというと、イイ映画なのだ、これが。

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