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ぴー吉 上野 歩 / イ 
第149回 北海道三都ものがたり(中編)〜函館と映画『居酒屋兆次』・・・P2

挿絵  高倉健は九州出身だが、北国がよく似合う。山田洋次監督の『幸福の黄色いハンカチ』(’77年)と、その姉妹編とでもいうべき『遙かなる山の呼び声』(’80年)では、高倉のイメージそのままに主人公は九州生まれでありながら北海道まで流転してきたという設定だ。背後にある仄暗い過去は、ヤクザ映画出身というプロフィールを上手に利用している。
 このように、過去には道を外れていたが、いまは素っ堅気という役柄を中心に、高倉は40代半ば〜50代の脂が乗り切った時期、北の国を舞台に充実した作品に出演しつづけた(やがて北海道を突き抜けて『南極物語』(’83年)や、サハラ砂漠を縦断するパリ・ダカール・ラリーを描いた『海へ See you』(’88年)のオファーに応えるに及んで“極地俳優”との異名で呼ばれるようになるわけだが)。

 さて、函館を舞台にした『居酒屋兆次』に話をもどそう。本作の高倉は、元ヤクザとか、ムショ帰りとか、指名手配犯とかではなくて、居酒屋のオヤジになるまえは造船所に勤めていた。同僚社員の首切り役を嫌って脱サラしたという設定だ。
 店にやってくるタクシー会社社長の伊丹十三の悪役ぶりが憎々しかった(本エッセイの第137回『伊丹十三記念館』参照)。
 損な役回りだったのがヒロインの大原麗子である。かつて高倉兆次とは将来を誓い合った仲であったが、彼女に牧場主との縁談話が持ち上がったことで若く貧しかった兆次は身を引く。いまも彼への思いが断ち切れない大原は、酒びたりで泣いてばかりというのではあまりに仕所がない。でも、もともとこのひとは映画向きの女優さんではないから。
 大原麗子はやっぱりテレビである。それに都会派だ。倉本聰脚本の『たとえば、愛』(’79年)なんてよかったな。大原はラジオの深夜番組のディスクジョッキーを演じていた。主題歌の『とまどいトワイライト』が懐かしい。このドラマは映像ソフトが入手できないので、中野ブロードウェイの古本屋で買った理論社のシナリオを時々ひっくり返している。

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