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/ 上野 歩
monthly essay / ueno ayumu

ぴー吉 第151回 日帰りバスツアー(6)〜嵐のなかを編〜

挿絵  日本百名山のひとつ谷川岳の紅葉を見に行くバスツアーに申し込んだのだけれど、折りしも大型台風が襲来。出発の数日前から天気予報を気にしていた。すると、台風の進路や速度にともない予報も迷走し、関東への最接近が、旅の翌日となっていたかと思ったら、結局はまさにツアー当日にぴたりと重なってしまった。

 その日は朝から波乱含みだった。
 支度をして、強く降りしきる雨のなか時間に余裕を持って家を出たのだが、カメラ代わりのケイタイを忘れたことに気がつき、走って取りに戻った。ふだんからあまりケイタイってつかわないんだよな。僕のなかには必携の意識がない、などと自分に言い訳する。
 それはともかく、毎日30分のエアロバイクトレーニングによる脚力で雨中をひた走り、集合場所に遅れることなく到着。ひとまず、ほっ。

 本降りの雨だったが、まだ風は強くない。リュックにはビニール合羽を用意してきていたが、集合場所の駅前ロータリーに至る15分ほどのこの道のり(途中引き返したので、そこにプラス5分か)傘をさしただけで、ジャンパーの肩やズボンの裾が多少濡れた程度であった。
 停められていた観光バスに乗り込む。まさに紅葉のベストシーズンで、バス2台での出発が決まっていたが、直前のキャンセル続出。車内はがらがらだった。無理もないことである。っていうか、僕のなかに“キャンセル”という文字が浮かばなかったのはなぜ?
 
 さて、僕の席は1号車である。いよいよ嵐のバスツアーがスタートした。これからの成り行きを思うと多少緊張する。

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