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ぴー吉 上野 歩 / イ 
第151回 日帰りバスツアー(6)〜嵐のなかを編〜・・・P2

挿絵  ところが、覚悟に反して風はなかなか強くならない。
 途中、サービスエリアでの2度のトイレ休憩を挟んで、バスは順調に走行。
 台風予報から高速を走っているクルマが極端にすくないのだ。本来なら紅葉狩りの観光客で賑わうところが、まったくの渋滞知らずで群馬県・水上に到着する。

 まずは地元名産のバイキングで腹ごしらえということになった。
 肉じゃが、おでん、野菜天ぷら(カボチャ、ピーマン、ナス)、キャベツサラダ、ナメコ汁と素朴な品々が並ぶ。
 自慢らしい上州牛の串焼きは、冷凍しておいたものをガスコンロで炙ったのが出てくるのだが、干からびたみたいで不味かった。
 それに食事場所というのが、屋根はあるけれど半屋外のバーベキュー場で、雨は降ってるし寒いよお。
 とはいえ、地場産の野菜はやはり新鮮で、天ぷらのピーマンなど肉厚でジューシーだった。味噌汁のナメコも大きいし、幾種類かある漬物も、竹の子の梅漬けはいささか甘すぎだが、だいだいうまい。
 まあ、毎度のこと、日帰りバスツアーの食事には多くを期待していないので、不満を募らせることなく、海苔が巻かれ、胡麻がふられたおむすびにかぶりつく。
 観光農園に併設された食事処らしく、デザートの巨峰を改良した種なしブドウが美味で幾つかつまんだ。

 さて、ふたたびバスで移動し、谷川岳ロープウェイの駐車場で下車すると、なんと雨が上がっていた。空の上のほうが明るくなっている。
 いちおう傘は手に持ったが、とうとうビニール合羽はリュックから出さなかった。
 そこからマチガ沢まで国道291号線を往復1時間ほど散策する。舗装道だが、自動車の通行が禁止になっていて、のんびり歩くことができる。

 雨にしとどに濡れた峻厳な岩肌と紅葉のコントラストが美しい。マイナスイオンを胸いっぱいに吸い込む。
 静けさのなかに、遠く足元の崖の底のほうで流れる沢の音が耳に届く。
 ここも人出がすくない。添乗員さんの話だと、この時期、先ほどの駐車場にふだんなら長蛇の列ができて、観光バスを入れるのに一苦労なのだという。
 いま歩いているのも、わがツアー客が間隔をあけてぽっつりぽっつり歩いているくらいである。

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