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/ 上野 歩
monthly essay / ueno ayumu

ぴー吉 第160回 隠岐島(後編)

挿絵 ・2日め
 島後(どうご)の西郷港からフェリーに乗って、島前(どうぜん)の西ノ島を目指す。
 西郷港からは、本土行きの船も出ている。航路は海上国道で、本土から見て近いほうが島前、遠いほうが島後となるらしい。

 僕の乗った「しらしま」というフェリーの船体には、一反木綿(いったんもめん)にまたがったゲゲゲの鬼太郎の雄姿が描かれている。水木しげる氏が、隠岐島を自身のルーツとしていることから、観光に一役買っているのだ。
 水木氏の生み出したキャラクターは、氏の出身地である鳥取の境港や、在住する東京・調布など、あちこちで観光資源となっている。
 そうだ、僕も、多くのひとたちから支持されるようなキャラクターの登場する小説を目指そう! というわけで、新刊を10月1日に文芸社より出版します――題して『鳴物師 音無ゆかり 事件ファイル』(なりものし・おとなしゆかり・じけんふぁいる)――ウエノ新境地のサイコミステリでございます。書店で、ぜひ手にとってくださいね。

 西ノ島の別府港までは、1時間ほどの航海だ。
 デッキで海風に吹かれていると、浮世を忘れる。
 時々、トビウオが海上を飛ぶ姿が見られた。胸ビレをくるくると回転させるようにして、けっこうな距離を飛ぶ。日テレの「鳥人間コンテスト」で見る滑空のように、水面上ギリギリを落ちそうで落ちない。
 トビウオは島根県の「県の魚」に指定され、「アゴ」と呼ばれている。アゴダシのアゴである。

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