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/ 上野 歩
monthly essay / ueno ayumu

ぴー吉 第165回『日帰りバスツアー(9)〜雪見列車と雪見温泉編〜』

挿絵 「添乗員さん、少しスマートになったんじゃない?」
「痩せて、イケメンになったわよ」
 オバちゃんたちの、勝手な声が車内に響き渡る。そんなヘビーユーザーばかりで参加者が占められているのが、地元の観光会社が企画するバスツアーである。
 かく言う僕と妻も、この会社のバスツアーの結構な得意客である。
 添乗員さんも若手を中心になかなかのタレント集団であるし、常連相手だけに観光会社側も手を抜いた商売はできない。期待を裏切れば、客が離れてゆくからだ。
 というわけで、ここのバスツアーは、まあハズレもなく、安心して利用できる。

 今日は、磐越西線(ばんえつさいせん)の車窓と、麒麟山温泉の露天風呂から雪景色を眺めようという日帰りのコースである。
 ツアーは朝ご飯付きで、車内で配られたおむすびを頬張っていたら、後ろの席のオバちゃんからタクアンのおすそ分けがあった。

 東北道は晴れていたが、磐越道に入って猪苗代湖畔まで来ると雪が舞ってきた。しかしながら途中渋滞もなく、バスは順調に走る。
 磐越西線の予定乗車時間より、40分ほど早く喜多方駅に到着した。
 乗車時刻まで自由散策となる。喜多方といえばラーメン――ということで、味わってみるかと妻と合意した。
 粉雪の駅前を歩き、あれこれ迷わずに開いているお店を見つけると即入る。看板に『元祖蔵ラーメン』と謳う桜井食堂さんで、入口横に掛かってるプレートを見ると朝の8時から営業中である。
 ちなみに町を見渡してみると、軒を連ねるラーメン屋さんの多くが『元祖』を謳っているようだ。
 バスツアーはお昼ご飯が付いているので、差し障りのないように夫婦で1杯の醤油ラーメンを分け合って食べることにする。
 蔵ラーメンという名称で、チャーシュー、茹で玉子、メンマ、鳴戸巻き、ネギ、ワカメといろいろ載っていて、カツオだしのスープに生ショウガが入っているのが特徴である。700エン。

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