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/ 上野 歩
monthly essay / ueno ayumu

ぴー吉 第170回『日帰りバスツアー(10)〜福島応援コース編〜』

挿絵  地元の旅行会社が、日帰りバスツアーで福島応援コースを組んだ。
 東京観光財団が「被災地応援ツアー」に指定していて、旅行代金が割り引きされている。確かにお得なのだが、そうでなくとも、ここはぜひ一肌脱ぎたいものではないか。
 で、チラシを見て、さっそく妻と2人で申し込んだ。

 あれだけすぐに申し込んだのだから、観光バスの座席は前のほうだろうナと思っていたら、あに図らんや。当日、集合場所に行ってみると、なんと後ろから2列目だった。
 最初のほうどころか、あと少し申し込む時間が遅かったら、満員札止めになっていたところである。

 梅雨の晴れ間、まず到着したのは福島市内の観光農園だった。
 ここでサクランボ狩りをする。
 日本のサクランボのシェアの70パーセントは、ご存じ山形県と圧倒的。2位は青森、3位は山梨……なんだ、福島が出てこないじゃないか。
 でも、順位だけではないのである。なんでもそうではないですか、ねえ。
 福島のサクランボは、ほんとに甘くておいしかった。
 以前、山形盆地の寒河江(さがえ)というサクランボの産地に行って、そこの数ある観光農園の中で、「超VIP」と謳う(なにしろ入り口に造花だけどバラのアーチまでかかっていた)ハウスで、サトウニシキを食べたけど、それと比べても福島のサクランボは遜色なかったね。
 ただ甘いだけじゃなくて、サクランボらしいサクランボの味がした。
 オマケにすいてるもんだから、どの枝にも実が鈴なり。
 赤い実だけじゃなく、黒いの、薄ピンクの、より取り見取りである。
 両手にサクランボの房を持って、それを交互に口に含みつつ、種を吐き出しながら次の枝へと移る。
 サクランボだけでお腹をいっぱいにするなんて、ひどくぜいたくな気分だ。

 直前にすごい台風がきて、被害を心配したのだけれど、こちらは風台風ではなく雨台風だったようで、影響はあまりなかったそうだ。「夜中まで起きてたんだけど、よかった。風が強いとハウスごと持ってかれちゃうからね」と農園の方が言っていた。

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