上野亭かきあげ丼 ホームページへ
 各店員のページへ: ふじたかつゆき ふじさわみえちー

ぴー吉 上野 歩 / イ 
第181回『北の町に桜を訪ねて(中編)八甲田山』・・・P3

挿絵

 さて、バスの窓外には、切り通しの雪の回廊が続いている。この白い壁が高いのだ。立山黒部アルペンルートで歩いた「雪の大谷」よりもさらに高い。

 八甲田を下りると、お昼はホタテの貝焼(かや)きを味わう。ホタテの大きな貝殻に、ホタテの稚貝や野菜、シメジを載せて味噌で焼き、そこに卵を落とし、和えながら食べるのだ。
 映画『八甲田山』では、遭難した青森連隊に対して高倉健率いる弘前連隊は、案内人を雇い、少数精鋭を組織して順調に行軍を終える。
『高倉健インタヴューズ』(プレジデント社)では、「案内人殿に向かって、頭(かしら)、右!」と部下に向かって命令する台詞を、高倉自身が名台詞として挙げている。これは、台詞自体がいいのではなくて、兵隊が案内人の女性(秋吉久美子)に対して礼を尽くす場面の総体としてよいのだと語っていた。
 兵隊たちと別れ、家路につこうとしていた秋吉がびっくりする。確かによいシーンだった。
 雪の白と、軍服の黒の中に交じって、この案内人(「せがれの嫁だから無理をさせないでほしい」と花沢徳衛の舅が訴える前振りがある)だけが明るい赤を身にまとっている。その赤は、まるで庭先をいくように軽々と隊を導き、時に行軍を置いてきぼりにしそうになるのだった。
(つづく)

ページ操作マーク まえのページへ    ページ操作マーク はじめのページへ