飯山市は居住地域としては世界一の豪雪地帯とのこと。11月に入ると降り始め、1年の半分は雪に埋もれているという。積雪はなんと5メートルにも及ぶ。
そして雪解け水の豊富なミネラルを含んだアスパラガスはこの地の名産品である。
新潟との県境に横たわる関田山脈を望む畑で、アスパラを刈る。畑とはいっても、ただの空き地のような所に、にょきにょきと土筆(ツクシ)のようにアスパラが伸びている。それを農家で借りた鎌で刈り取るわけだ。
雨に備えてレインシューズを履き、畑がぬかるむだろうと、脛(すね)には泥除けのゴムの脚絆(きゃはん)まで付けている。しかし、雲間からは陽が射して暑いくらいだ。
ひとりが刈り取れる分量は400グラムまで。これは細いので20本ぐらい。太いのだと10本くらいになる見当だそうだ。しかし、いずれも30センチくらいに伸びていて、細いのといっても、東京のスーパーで売ってるような貧弱なのとはワケが違う。刈ったのを片手で持っていると、けっこう持ち重りがする。
鎌で刈ると、すぐにジュワッとアスパラから水分が吹き出す。
その水分が時間の経過とともに抜けていくのを惜しみつつ惜しみつつ帰京した。
東京は雨が降り続いていた。
梅雨寒のため、道の駅で買い求めたたっぷりのきのこと豚肉の鍋はよい選択だった。
刈ってきたアスパラのうち数本は、油が回る程度にさっと炒めたのち、フライパンに塩と少量の水を入れ、フタをして1分ほど蒸し煮して食べた。ジューシーさ、甘さが口の中であふれる。
残念ながら民宿の昼食では、この至福が味わえなかった。やはり、一度にあまりにたくさん料理するからだろうか? アスパラ1本丸ごとの天ぷらもこけおどしである。生春巻きなんかにもしなくていい。産地では、もっと素材そのものが食べたいのである。新鮮さを味わいたいのだ。
そんなことをベランダの植木鉢の間で、濡れないように引っ繰り返したままサッシ窓の下枠に立てかけてあるサンダルを眺めながら考えた。
