館山に到着すると、まずは古民家レストランでお昼を食べる。
先付(さきづけ)のお重にある茶碗蒸しにタケノコが入っているのが嬉しかった。
今年はタケノコが高値で、買うのをためらってしまった。高いといっても、こういうお店で少しを口に入れるのだったら、八百屋さんで買ったらもっとたくさん味わえるのだけれど……
しかし、それとこれは別の話で、やはり、1合1500エンもする獺祭(だっさい)を注文している。まあ、たまの贅沢(ぜいたく)である。
お造りはヒラメ、カツオ、それにブリの成魚になる前のワラサ。つまものは大根かと思いきや新タマネギの薄切りであった。こいつを一緒にカツオをショウガ醤油で頂く。刺身は、淡白な白身から口に入れるのだろうが、大好きなカツオに真っ直ぐに箸が伸びるのである。
「肴(さかな)を支えるには、獺祭は主張し過ぎるな」などと小言をひとり呟きながら、贅沢を楽しむ。
煮魚の、ワラサと一緒に甘辛く煮つけられたのも大ぶりなタケノコで、やはり嬉しかった。そういえば、もう10年ほど前になるのだろうか、やはりこの観光会社のバスツアーで千葉にタケノコ狩りにきた。竹林を渡るざわざわという風の中で、僕は掘りたてのタケノコの根の部分、泥のついていない白い断面にかじりついた。ナシのようなみずみずしい歯ざわり、つづいてサトウキビのような甘味が口に広がったものだ。エアコンと水洗トイレのないところに行きたくないウエノに、バスツアーは適度な野趣を体験させてくれる。