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ぴー吉 上野 歩 /
第211回 日帰りバスツアー(17)〜旅の名残(なごり)編〜・・・P3

挿絵  食事の時間も入れ、バスの出発時間までは70分あったのだけれど、コース料理がゆっくり運ばれてきたため、庭の足湯に浸かる暇がなかった。
 まあ、その分のんびりと食事が楽しめたわけだが。

 次のコースは空豆狩りである。やはり、以前、空豆狩りのツアーにも来たことがあった。ただ、あの時は、ゲリラ豪雨に見舞われて空豆狩りが中止になってしまった。今日は、その意趣返しにやってきたわけである。
 サヤが天を指すようになるから空豆というそうだが、大きく重たく育ち、垂れ下がっているのを狙って摘む。
 妻と1キロずつをお土産にした。

 お土産といえば、落花生のつかみ取りは、妻が240グラム、僕はなんと324グラムをつかみ取りした。つかみ取りというより、手だけでなく両腕にまで盛大に落花生を載せたのであった。農家の若い男性が「スゴイですね」と思わず感想をもらしていたが、この方のビニール袋での受け方が上手だったから、これだけ持ち帰れたのだ。
 いうまでもなく落花生は千葉の特産品である。

 帰宅して、夕餉(ゆうげ)に空豆をサヤごと7本焼いた。焦げ目のついたサヤをはずすと、ほっくりと蒸し焼き状になった豆が現れる。皮は剥(む)かずにそのまま塩をちょいと付けて食べるのだ。どれも新鮮な緑のジュースをたっぷりと含んでいて、ぱーんとしたうま味が弾ける。
 食べつくしているはずなのに、もう実は残っていないかと、念のためにサヤを何度も押して確認してしまう。まるで、旅の名残を味わうかのように。

 妻は落花生を食べるのが好きだが、殻を割るのも好きだそうだ。で、食後のウイスキーを飲みつつ、彼女が割った落花生を食べる。「今日のツアーのビワは今ひとつだったね」と感想を言い合いながら。
 以前、ツアーで味わった時は、皮を剥いている時にも甘い果汁が滴り落ち、それが口に入れたとたんにじゅわっと広がって、「うンまい!」と思わず声が出てしまった。皮を剥く指の爪が黄色く染まっても、こぼれた果汁でチノパンに染みがついても、そんなこと気にしないで、たわわな実を20個近く食べただろうか……
 よそう。今回のエッセイは、「以前のツアーでは」が多すぎる。そして、これまでどれだけ日帰りバスツアーに出かけたことだろうと思うのだ。そのすべてではないが、この『時々エッセイ』に綴ってきた。旅の名残を感じながら。

 翌朝、道の駅でお土産に買ってきた7枚300エンのアオアジの干物を焼いた。一緒に求めたタラの芽は今晩、天ぷらにするつもりだ。
 朝ごはんのあと、妻は、やはりお土産の小梅を醤油に漬けこんでいた。おそらく旅の名残を感じつつ。

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