上野歩の書き下ろし小説『探偵太宰治』(文芸社文庫NEO)の紹介インタビュー、その後編です。
当ホームページ《上野亭かきあげ丼》の板長ことイラストレーターのふじたかつゆき画伯が、読後の感想を含めてインタビュアーを務めてくれます。
ふじた:『探偵太宰治』を大変楽しく拝読いたしました。太宰の生涯にあまりくわしくない私としては、どこまでが実話かきっちりとは分からないのですが、「あわいの館」については創作なのですよね? それとも、モチーフとなった実話があるのでしょうか?
上野:あわいの館は、まったくの創作です。太宰の人生にも作品にも登場しません。
ふじた:単に頭脳明晰で繊細な探偵像にせず、あわいの館のような、ちょっとオカルトっぽい要素を加えたのはどのようなねらいがあったのです?
上野:太宰はなぜ自殺未遂を繰り返したのだろう? という疑問から行き着いたのが、あのあわいの館でした。太宰は自殺しようとしたわけではなくて、あわいの館へいくための手段として自殺未遂を繰り返した、というのが発想です。読者の方々も、実際に太宰があわいの館へ行ってたんじゃないか、と錯覚してくださったなら、しめたものです。
ふじた:私の想像と一番違っていた部分があわいの館の存在だったんですよね。普通に推理して事件を解決するんだろうな、と思っていたもので。ただ、江戸川乱歩のような妖しさっていうか、その不思議な設定がまた面白かったです。「猫しゃぶり」という名前の気持ち悪い池の設定も効いてるなあと。