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/ 上野 歩

ぴー吉 第216回 日帰りバスツアー(18)〜人生最高のビール編〜

挿絵  これまでの人生でいちばんうまいと感じたコーヒーの思い出は、大学時代のことだ。確か2年生だった。
 夏休みで、僕は西新宿の高層ビルでアルバイトをしていた。銀行系の信販会社で、月々の支払いが遅れているクライアントに電話し、督促(とくそく)する仕事だ。
 当時は、まだオフィスでタバコが喫(す)えた。僕は洋もく(外国タバコを昔はそう呼んだのです)のケントをくわえつつ、受話器を顎と肩の間に挟み、ジッポのオイルライターのフタをカチャリ、カチャリと開けたり閉めたりしつつ電話をかけ、ハードボイルドな気分に浸っていたのだった。
 ランチは高層ビル内にあるビュッフェ形式のテナント用レストランでとる。食後は、バイト仲間と、やはり高層ビル内の茶店(さてん=喫茶店のことを昔はそう呼んでいたのです。それに、スタバみたいなカフェもなかったのです)に行く。そして、ある日の昼休みに飲んだコーヒーがとてつもなくうまかった。
 その日のサービスコーヒーは、グァテマラ。酸味が強いこのコーヒーがおいしく感じられたのは、その日の僕がひどい二日酔いだったからかもしれない。

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