さっきまで台所で家内が洗ってた泥つきラッキョウが、ソウメンの入ってた木箱にならべられ、ベランダで風に干されている。
僕は晩酌のとき、味噌をつけてあれをかじるのをたのしみに、この文章を書いている。
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英国詩人シルヴィア・プラスのことを知ったのは、新聞の夕刊記事でだった。
プラスは40年近くまえの冬の朝、幼い子どもの枕もとにミルクとパンを残し、オーブンのなかに頭を横たえガス自殺した。
やはり詩人である夫テッド・ヒューズが人妻と恋をし、彼女のもとを去ってからのことだった。
その後、この人妻もまたガス自殺してしまう。しかも、ヒューズとの間に生まれた女の子を道連れにして。
30歳で自殺したシルヴィア・プラスは、当時無名だったが、死後、ヒューズの手によって遺稿詩集『エアリアル』が出版されると、個性的な女流詩人として名声を確立する。