僕は、たいていテレビのニュースを見ながら晩酌をするので、夕刊は翌朝のごく早い(朝刊がまだ届かないような)時間に、コーヒーを飲みながら読む。
そうして、どこかの大学の先生が書いたこの記事を見て、ああ、小説になりそうだと思った。
ともかくも、それがことのはじまりだった。
僕の新しい小説『愛は午後』の主人公は、かがりとリンゴの姉弟だが、彼らの両親である詩人・林りんと林一は、プラスとヒューズをモデルにしている。
りんの死後、一は、彼女の残した原稿を編纂し、『愛は午後』という詩集を出版する。
僕が『愛は午後』を書くにあたって、とうとう『エアリアル』を読むことはなかった。
ものを書くうえで啓示を与えられたのが、詩人のつくった詩の一節ではなく、詩人の死そのものであったというのは、なにか申し訳ないことのようにも思う。いくつかななめ読みしたプラス関連の文章によると、彼女は、ヒューズとの結婚まえから自殺未遂をくり返していて、どうもキレやすいひとだったらしいのがうかがえる。『愛は午後』の詩人・林りんに、プラスの性格までは反映させていないけれど。