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/ 上野 歩
monthly essay / ueno ayumu

ぴー吉 第60回『名画座のある街』

挿絵  不登校とまではいかないけれど、高校のころ、学校をよくサボった。
 勉強がおもしろくなかったのだ。
 授業についていけなくなったのは中学のころからで、期末の英語のテストで、〔筆記体で答案を書くこと〕とあるのにブロック体で書いてた。筆記体でアルファベットが書けなかったのだ。
 返されたテストには、〔本当なら0点〕という先生の赤いサインペンの文字があった。もちろん、僕がブロック体でまばらに埋めた解答そのものの的中率もそんなに高いはずはなくて、お情けでもらった点数自体が〔本当なら〕もなにもないようなものだった。

 そんなありさまだから高校受験は惨敗で、最終的に願書さえ出せば入れるような学校に通うこととなった。
 入学したばかりのころは、心機一転、挽回しようという気持ちもないわけではなかったけれど、急に教科書の内容がわかるようになるはずもなかった。
 日常のほとんどは僕には理解できない授業の時間に埋めつくされている。
 そうなると日常そのものとうまく向き合うことができなくなってしまった。
 必然的にそこから逃避する行動をとる。
 僕の逃避場所は映画と本だった。

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