それでもさいしょのうちは光が丘まで足を伸ばさなければならなかったのだ。
住んでいるマンションのまわりは住宅地で、すこし歩くと畑ばかりだった。
光が丘の巨大団地群には、そこに暮らす1万2千世帯の台所のためにスーパーが2店舗と専門店街がある。いい魚屋もあった。
わが家には車も自転車もないので、僕と妻は週にいちどリュックとクーラーバッグをかついで、食料のまとめ買いに往復1時間以上の距離を歩いていた。
道々、畑の無人スタンドで野菜のよいのがあると買い求めたりもした。
ところが、年を経るごとに、というよりもまさに日に日にといった勢いで、そうした畑の数が減っていった。かわりに大小のマンションが建ち上がってゆく。
ある日、窓から見えるガソリンスタンドが閉鎖され、取り壊しがはじまった。あの土地の広さだと、相当な規模のマンションが建つかもしれない。うちは8階に部屋があるけど、もしかしたら視界がふさがれるようなことになるのでは、と思った。そうなったら、たのしみにしてる夏の豊島園の花火も見えなくなる。心細い思いで工事計画書を見に行ったら、なんのことはない老朽化にともなうガソリンスタンドの新築工事で、ほっとした。
