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/ 上野 歩
monthly essay / ueno ayumu

ぴー吉 第77回『開幕第2戦』

挿絵 東京ドームの周囲では読売ジャイアンツの球団歌『闘魂こめて』が高らかに響きわたっていた。
 セ・リーグの開幕第2戦、対阪神タイガースのゲームを見に東京ドームにきていた。
 平日は16時開場なのだが、土曜日なので15時半に入れる。そうするとジャイアンツの打撃練習を30分だけ見ることができるのだ。
 バックネット裏に立ち、今シーズンから新たに加入した小久保とローズのスイングを間近でチェックする。小久保が、かーん、と乾いた球音を響かせて、気持ちよさそうにボールをスタンドにはこんでいるのにくらべ、ローズの打球の伸びがいまひとつなのが気になった。ローズといえば高くかかげたバットをぶるんぶるんふるわせる独特のフォームが印象的だけれど、そのバットの先がバッティングケージに触れてしまって窮屈そうだ。
 18時からのプレイボールの早2時間半まえにこうして東京ドームに入って、ゲームセットまで5時間以上もずーっといるわけだから、ほとんど仕事みたいである。でも、いいのだ。好きなんだから。
 ジャイアンツの打撃練習が終了したところで自分の席へと向かう。三塁側の前のほう、内野の中ほどの位置である。
 どうして敵陣の三塁側の席にいるかというと、妹の亭主が用意してくれた席だからである。義弟は杉並生まれの杉並育ちのくせにタイガースファンなのである。
 その義弟は、僕よりも10歳近く齢上で、いつも忙しくしているひとである。きょうも勤めがあって、ここにくるのは18時をまわってからになると言っていた。
 僕は義弟のと2人分のビールのつまみを買っておこうとコンコースの売店を物色することにする。ドーム弁当、ハンバーグ弁当、懐石風、幕の内、中華、いろいろあるなかから万世のカツサンドを買った。それと枝豆。

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