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ぴー吉 上野 歩 / イ 
第77回『開幕第2戦』・・・P2

挿絵  防波堤にこびりつくフジツボのように、あんなとこにも、といった感じに上の端っこの方にまである客席が、だんだんと埋まってゆく。
 僕の席の後ろが通路なので、タイガースの黄色いメガホンを後頭部で打ち鳴らされる苦痛を味わわなくてすんだのだが、ひとが通るたびにやたらと揺れるのである。それも、開始時刻がせまって横並びの席に客が座ると人々の体重でおさまってきた。
 プレイボールがかかると、ななめまえの席の小学生の女の子がウナギの蒲焼弁当をつつきはじめた。
 ジャイアンツの先発は高橋尚成、タイガースが福原で、ともに立ち上がりは快調そのもの。二十分もかからずに2回が終了してしまった。
 ジャイアンツの注目のファーストスタメンは清原ではなくペタジーニ。開幕2日めであるし、堀内監督としてはいろいろ試してみようということか?
 ショートもきのうホームランを打った元木ではなく川中である。
 それにしてもライトスタンドのタイガース応援団は統制がとれている。黄色がぱたぱたとはためくところは一面のタンポポ畑が風に揺れているようでもある。それにくらべてライト側のオレンジ色はホームグラウンドでありながら精彩を欠いている。
 3回、出来がよいと思った高橋尚が矢野にホームランを浴びて1点を献上する。
 さらに4回のタイガースの攻撃、死球と安打で塁を埋めんとしているところで、ダブルのスーツを着こんだ会社帰りの義弟が登場。「お兄さん、遅くなってすみません」
 齢上の義弟に「お兄さん」と呼ばれると、いつもこそばゆい思いがする。
 彼はスコアボードを見て「あ、勝ってる!」とひとこと言ったかと思うと、そのまま満塁になったひいきチームの応援にすぐさま没入した。
 そんな彼の眼前でアリアスが放った打球は満員のスタンドに突き刺さった。「やったー!!」
 歓喜する義弟。そのあとで、呆然としている僕をちらりと見て、「すみません」とひとこと言った。

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