ある季刊誌で人物ルポルタージュを書く仕事を連載していて、取材で名古屋に出かけた。
受け持っている講義が終わって、川崎市にある専修大学の正門から手配しておいたタクシーで新横浜駅に行き、新幹線に乗る。
きょう会う〈人物〉は、名古屋から車で1時間ほど走った碧南の港町で、涅槃図(ねはんず)の絵解き説法を聞く小さな会に出ていた。会場は古い料亭で、「後は飲み会になるから上野さんも出れば」と言われ、僕も覗いてみることにした。
地元のお坊さんが面白おかしく話す法談をうかがい、酒食になる。飲んだり食べたりしつつ〈人物〉をインタビューし、そのあとでもう1軒流れて、さらに話を聞き、用意してもらったホテルに1泊した。
朝食はホテルのラウンジのバイキングで、全然期待していなかったのにもかかわらず、これが意外においしくて、港を見下ろしつつ赤魚の煮つけなんかをおかずにご飯を2杯食べた。