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/ 上野 歩
monthly essay / ueno ayumu

ぴー吉 第84回『讃岐うどんをめぐる冒険(後編)』

挿絵 期待の『なかむら』を食べそこね、その欲求不満を解消すべく入った3軒目のうどん屋は、いまひとつだった。あくまで僕とYふたりの評価だし、見当ちがいだったら迷惑がかかるので、あえて店名は伏せることにする。
 店のつくりは、これまででいちばん小ぎれいだったけど、その分どこにでもあるような、かぎりなくふつうのうどん屋だった。つゆがややしょっぱくて、首都圏近郊の店でうどんをすすっているようだった。すこしも郷愁が感じられないのだ。讃岐うどんを食べているという気がしないのである。
 ごま、天かす、七味、ねぎ、しょうが、テーブルにあったあらゆる薬味でもって、丼のなかからなにかを引き出そうと試みたが、そこにはなにも見つけられなかった。ただただフツーなのである。値段はこれまででいちばん高くて、冷やしの〈小〉が260円と、こちらのほうも首都圏並みであった。
 Yは中古CD屋を見つけると、何枚か買い込んできて、気分転換に音楽を流しながら運転している。洋画サントラのオムニバス、坂本龍一、Mr.Children。
 僕らのこの旅も後半に入ったのだ。吹き過ぎる風に一抹の寂しさを感じる。

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