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ぴー吉 上野 歩 / イ 
第84回『讃岐うどんをめぐる冒険(後編)』・・・P2

挿絵  JR坂出駅前にYが車をとめた。
「おまえ、みやげ買うだろ?」
 と言われ、
「ああ」
 とこたえると、
「ここで買おうぜ」
 Yが駅構内に入って行く。
『亀城庵』といううどん屋のまえに立った。
「ここは機械打ちなんだけどな。かなり手打ちふうで、うまいんだ。日持ちもするしな」
 そう言って、Yはたくさん買い込んでいる。僕も6食入りをみやげに買った。
「さあ、もう1軒行くぞ」
 とY。
「なんだ、まだ食べるのか?」
「バカじゃねえの。もう1食くらい入るだろ。そのまえにKを呼ぼう」
 Yが携帯電話を取り出すと、Kのところにかけた。しばらく、なにやら話していた。
「Kのやつ、仕事らしい」
 その日は土曜日だったが、住宅販売の仕事というのは、週末のほうが忙しいのだろう。それにしても、Kにしてみれば、なんのまえぶれもなく急に呼び出されても……といったところだろう。
「Kは3時半には仕事が終わるらしいから、また電話しよう」
 さて、その日4軒めのうどん屋は、ハシゴに上ったひとが〔うどんのなかにし〕とペイントしている巨大看板が眼をひく『なかにし』である。
「まだ食べるのか?」なんて言っていた、自分の口が信じられないくらい、店のまえに立ってみると、ふたたびうどんを乞うている。
 台湾屋台ふうとでもいった店内で、1玉180エンのうどんに冷たい汁をかけて、かっこむ。むむ……こ、これは……なんとも、もちもちとして、なまめかしく、色っぽいうどんであった。
 1軒目の『上戸』が、男性的な“ますらおぶり”うどんであるとしたなら、『なかにし』のうどんは、女性の肌のような“たおやめぶり”である。うどんをすすりながら、思わず僕は頬を染めてしまった。

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