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仕事でひとに会うために東京葛飾柴又の帝釈天(たいしゃくてん)を訪れる。
僕は葛飾区から荒川をはさんだ墨田区で生まれて育ったのだけれど、帝釈天に来たのははじめてである。
昭和のにおいがただよう参道にある団子屋さんに入って、草もちと葛(くず)もちを頼み、お茶をすすりつつ取材の相手と話をする。
週末は多くの観光客でごった返す映画『男はつらいよ』の舞台も、平日の午後は人出もまばらだ。みやげもの屋さんのご主人がのんびりと紙風船で遊んでいたりする。そうした普段着ともいえる町の姿は、さながら映画のなかの世界そのもののようだ。いましもトランクをさげた雪駄履きの“彼”が京成線の駅の方から歩いてきそうである。
陽が落ちてから隣町の金町にある魚のうまい小料理屋で酒。