カーナビがついているとはいえ、知らない町の道である。アッコさんは、多少迷ったが、なんとか車を高速に乗り入れることができた。
ナビゲーターのN子さんは、ペーパーとはいえ免許取得者だから、隣でなにかと腐心していたが、後部座席にいる☆子さんと僕は、すっかりアナタ任せをきめこんでいた。
山間を切り裂いた素晴らしい高速道路だが、それにしてもほかにあまり走っている車の姿がない。猪瀬直樹氏が怒りそうな道路である。
陽が沈むと、暗くなった道にはもはや対向車も、追走する車も完全になくなった。
高速を出て、山道に入ると、さすがにすこしどきどきした。ヘッドライトに浮かぶ道はなんとも細くて頼りない。無舗装の道をどんどん進んでいき、どこかの工場の資材置き場に入っちゃって引き返したりもした。
山道を抜け出すと明るい温泉町になり、すこしほっとする。
やがて、車は今夜宿泊する旅館のまえに。
なかなか到着しない僕らを、若女将が心配して待っていてくれた。
フロントマンが、アッコさんのかわりに車をバックで駐車場に入れてくれた。
取材相手の方に紹介され、ホテル内のお食事処で会席料理をいただく。
取材相手は地元企業の社長である。朝になってカメラマンが到着し、本格的なインタビューは明日行なう。今夜は飲んで食べてをともにして、リラックスしようというわけだ。
すっきりと甘い地酒がうまい。
席上、N子さんが高校時代ソフトボールの選手(セカンド)だったことが、☆子さんは器械体操の選手だったことを知る。なんと、体育会系の編集部ではないか。
食事のあと、近くのスナックで飲んで、宿にもどったのは1時過ぎだった。
時間外だったけれど、フロントのかたの特別のはからいで、露天風呂に浸かる。
ヒノキの湯船から、かけ流しの温泉があふれ、どお、どお、と音をたてる。お湯の音のほかには、カジカガエルの声が聞こえるだけである。
眼のまえの黒く切り立った山影が迫ってくるようだった。
