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ぴー吉 上野 歩 / イ  第91回『岡山旅日記』・・・P3

挿絵 翌朝、眼がさめると、ふたたび露天風呂へ。
 昨夜の山は陽の光の下で緑に輝いている。真暗で見えなかった眼下は川だった。ツバメが高く低く飛び交っている。真っ白なサギが飛来して、岸に舞い降りた。
 昨夜の食事処に女性スタッフ3人とともに朝食をとりに行く。他の宿泊客が、若い女性3人を従えてエレベータを降り、廊下をゆく僕を不思議そうに眺めていた。きっと新興宗教の教祖かなにかと思ったにちがいない。
 食後、取材先の会社から社員の若い青年が赤いスポーツカーで迎えにくる。アッコさんの車を先導しようというわけだが、僕はせっかくなので(なにがせっかくだかわからないけれど)スポーツカーのほうに乗せてもらうことにする。
「あまり飛ばして、後ろの車をぶっち切らないでくださいよ」
 と僕が言うと、
「だいじょうぶです。ちゃんと法定速度を守りますから」
 青年が言ってさわやかに笑った。
 滑るように発進したスポーツカーは、みるみる昨夜走った猪瀬直樹氏怒り心頭タイプの高速道へ。
 青い空、白い雲、緑の山間。そこを走る真紅のスポーツカー。
「まるで、車のコマーシャルみたいだね」
 と僕が言うと、
「ははは」
 とさわやかに笑う青年。
 ほんと、車のコマーシャルみたいだった。対向車も追走車も1台も見えない。
 え? 1台も? そう、後を走っているはずの3人の女性が乗った車も見えなかった。

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