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/ 上野 歩
monthly essay / ueno ayumu

ぴー吉 第99回『北京ダックと氷川丸のもうひとつの顔』

挿絵  春の日曜日に横浜中華街を訪ねた。昼まえの早い時間にやってきたのだが、香港路にあるお目当ての店には、すでに長い列ができている。古い、ちいさな店だけれど、いつもこんな状態だ。
 行列に加わる根性のないウエノは、すぐさま目的を変更。やはり以前から入ってみたいと思っていた中華大通りにある、ガラス張りの向こうにアメ色のチャーシューがぶら下がっているのが目立つお店に向かう。
 明るい窓辺の席にすわり、ビールと北京ダック、ラプチョン(豚の腸詰)を注文する。料理といっしょに持ってきてくれるように頼んだビールは、近頃ではめずらしい大ビンだ。
 ラプチョンを肴にビールを飲んでいると、お店の軒先を借りていた辻占いの女性が休憩に入ってきて、隅の席でウーロン茶をすすりつつ店員さんと四方山話をはじめた。
 はす向かいは雑貨屋さんで、キッチュな小物をずらりと並べている。通りを行き交う観光客の多くは、なにかしら食べながら歩いている。豚まん、甘栗、マンゴージュース。まるで学祭のようだ。この街でしばらく暮すのもたのしいかもしれない、なんて思えてくる。

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