分岐点。
ある選択をしたために、突然ピンチに陥る運命の交差点。それがその朝の電話だった。
バリ島最初の朝、昨夜コーマンさんが手配してくれた人から約束通り電話があった。
この人は今日行くはずのロンボク島近くに浮かぶ小島、ギリメノまでの交通と宿泊の手続きを面倒みてくれるという人なのだ、当然有料で。
電話の向こうのたどたどしい日本語をあやつる男は、がんばって色々説明してくれているんだけど、やっぱり思っていた金額の倍くらいを提示してきた。
そうでなくとも、もともと飛行機やらホテルやらは自分でもすぐ手配できるし、というか現地で自分で何もかもやってしまったほうが、確実かつ安いらしいと調べはついていたので、せっかくだけどと、いとも簡単にことわってしまった。
だいたい誰だかわからんような人にいきなりまかせるのもアレだしな。
ホテル、アサナサンティウィリーは朝もやっぱり極楽だった。
ドアの前には専用のソファーとテーブルがあって、小さいながら心地よい庭を見ながら朝食をとる事ができる。
愛想のいい女性スタッフがはこんでくるメニューは、パン、コーヒー、ジュース、果物、卵といったありきたりのものだけれど、やっぱりその雰囲気のせいで豊かな気分になってくる。
フと、ホテルで飼っているひとなつっこい犬が2ヒキ足下までやってきて、
「なんかくわしてくれよう」
とすりついてくる。これがまたなんともかわいい。
お給仕の姉さんに、日本円で50円くらいの チップをわたす。ものすごい嬉しそうだ。
そんなふうだから、時間までゆっくりしていきたくなったけれど、今日は随分遠くまでいかなきゃならないので、サッサと出発しなければならない。
荷物をまとめ、チェックアウトの手続きをすませると、フロントのねーさんはお約束で、今日はどこに行くの? というような事を聞いてきた。
ギリメノまでというと、ギョっとした顔になって、そりゃあ遠いねえ、すごいきれいな所だけどねえ、と困ったような笑顔になった。
まずは隣の島、ロンボク島までの飛行機チケットをゲットしなければならない。
タクシーを捕まえ、ング・ライ空港のドメスティック側につけてもらう。
国内線の飛行機は20人乗りくらいのかわいいプロペラ機だ。そんな小型の飛行機は、石橋をたたいてわたらない私としてはもちろんはじめての経験となる。
飛行機は同じロンボク島行きでも、2、3の飛行機会社から便がでていて、出発時刻も微妙にずれている。我々はこれまたネットで調べていた時、よく目にした「メルパティ航空」のチケット売り場に行ってみる事にした。
すると白人の家族らしい一向が受け付けの兄さんと「オーマイガー」なんて言い合っている。
しばらくオーバーアクションをまじえつつやりとりしていたが、なにか落胆したような顔をして、その家族は去っていった。
続いて受け付け兄さんになにごとかと聞いてみると、チケットは夕方の便までない、という事だった。白人家族の顔をみてあらかた予想はしていたが。長い滞在ではないので、この半日のスケジュールの狂いが非常にもったいない。
いそいで別の飛行機会社をあたってみると、こちらも夕方18時の便まで売り切れだという。
これはこまった、どうしようか。明日にのばすという案もあったが、なんとなく負けたような気がして、ものすごくくやしい。
「本日決行!」
できるだけ当初のスケジュールに近いカタチでいこう!
腹をくくりフライトの予約をした。18時なら、まだ明るいだろう。18時30分にはロンボク島につくから...ま、大丈夫。かな?
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