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ぴー吉 上野 歩 / イ  第102回『東京タワーの真下で味わう豆腐懐石』・・・P2

挿絵 新潟の豪農の民家を移築したものだという。鈍い光沢を放つ柱と梁で構成された高い天井の情緒あふれるロビーが、これから過ごす時間への期待と緊張を極限まで高める。
 受付で予約していたことを告げると、係の女性が部屋まで案内してくれる。邸内には、酒しぼりの酒槽(さかぶね)や仕込みの大樽が郷土博物館さながらに展示されていて、それについて案内の女性が説明してくれる。
 本館と客室は蔵造りの建物でブリッジされていて、ウェイティングバーがあった。なかなか雰囲気のよさそうなバーだ。食後に1杯飲るのもいいだろう。
 客室は江戸屋敷風。4人掛けの掘り炬燵の個室を妻と2人でつかう。昨年9月のオープンで新しいせいもあるが、部屋の隅々まで磨きこまれている。床柱にはノカンゾウの黄赤色の花が1輪。そうして、この1輪が、窓から見渡せる中庭とこの客室をまぎれもなく一体化させている。
 客室係の女性が挨拶にきて、飲み物をきかれる。この女性が、ときどき出かける老舗の蕎麦屋さんの若女将にとてもよく似ていて、気配りがすがすがしかった。きっと、彼女も蕎麦屋の女将さんも、客商売のDNAが組み込まれたひとの質(たち)なのだろうと勝手なことを思ってしまった。

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