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ぴー吉 上野 歩 / イ  第110回『マーブルチョコの思い出』・・・P2

挿絵  しかし、逆にそれは、子どものチョコレートによせる憧れをいっそう強める結果となってしまった。
 子供たちにとって(すくなくとも当時の)は、チョコは夢と憧れそのものだった。

 たまにマーブルチョコレートの筒型の箱が1本まるごと与えられたとしよう。
 フタを開けると、
 ぽんッ!
 という小気味よい音がする。
 この音を聞くだけで、ちいさなからだいっぱいに幸福感が広がる。
 
 筒のなかには、7色の糖衣に彩られたボタン形のチョコレートが詰まっている。
 僕は、それを1粒ずつ取り出しては、口に入れ、まず、チョコをコーティングしている糖衣のみを舌で舐めとろうと試みる。
 最初は、まわりの色だけがはげ落ちて、白い糖衣がむき出しになる。それを舌にのせ、鏡を覗き込み、「べー」をして現状を確認する。
 大いに満足した僕は、チョコをつぶさないようにして、歯と舌で糖衣の殻のみをはぎ取らんとする。ヘタをすると、チョコごと糖衣を噛み砕いてしまうことになる。
 だが、それはゆるされないことなのだ。めったに食すことのできない貴重なチョコである、時間をかけて、たんねんに味わう必要があるのだ。

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