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ぴー吉 上野 歩 / イ  第110回『マーブルチョコの思い出』・・・P3

挿絵  マーブルを食べ進んでいくうち、僕はおもむろにひとさし指を筒深く差し入れ、湾曲した壁面に指の腹をはわせて、なにかをさぐりあてようとする。
「あった!」
 オマケの『鉄腕アトム』のシールである。これは、あとで冷蔵庫の扉にでも貼ることにしよう。
 
 さて、マーブルも残りすくなくなって、指の届かない底深くにある数粒のみとなった。
 僕は筒を口にもってゆき、用心深くそれを傾ける。注意しないと、1粒とはいかず、数粒がいっしょに口に入ってしまう。
 あるとき、残っていた全部が、浅間山荘に突入する機動隊のようにいっきょに口中に飛び込んできて、僕は眼を白黒させつつただ飲み込んでしまい、あとで涙に暮れた。
 入っていたすべてのマーブルを食べつくすと、しばらくは筒の残り香をかぎつつ、チョコの思い出にひたり、つぎにいつやってくるとも知れないチョコ体験を夢想するのだ。
 
 そういえば、たくさん食べてはいけないチョコレートにはこんな思い出があった。
 ある日、到来物のチョコレートボンボンを、「いっぺんに食べちゃだめだからね」と母親が言って、しまっておいた場所をおぼえていた僕は、食べ過ぎてチョコに入っていたウイスキーで酔っ払ってしまったっけ。
 おとなになったいまは、夕食後にチョコレートをつまみながらウイスキーを飲むことがある。

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