僕が朝ごはんを食べていると、ちびヒヨがやってくる。
僕はご飯のうえにイカの塩辛をのせ、それを海苔でくるんで口に運ぶ。すると窓の向こうで、ちびヒヨも、リンゴのしんを細かく刻んだのをついばんでいる。妻がリンゴジャムをつくった残りを、中身が空になったミカンの皮のなかに入れたのだ。
春の訪れとともに、ちびヒヨは姿を見せなくなった。
僕は残っているミカンの皮をむき、ひと房口にはこびながら、あんなに食べたがっていたのだからもっと出してやればよかったと後悔した。そうして、まるごとのミカンを中身をくり抜いたように食べつくしてしまい、皮を、仕方なくついばんでいた小さな姿を思い出していた。
ぴー吉2世がつついたミカンの皮の端は、お弁当に入れるゆで卵のように花形になっていた。