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/ 上野 歩
monthly essay / ueno ayumu

ぴー吉第132回 これが銀座の高級天ぷら店だ

挿絵  みなさん、たいへんお待たせいたしました。『これが銀座の高級店だ』シリーズ第2弾です。と言いましても、第1弾『これが銀座の超高級鮨店だ』から早5年もたとうとしております。いかに、この手のお店に縁がないかがわかるところです。

*     *     *

 春のある日、お昼12時の5分ほどまえにそのお店に到着する。
 お昼のコースは12時スタートと13時半スタートのどちらかを選べる。僕は12時からのほうを予約しておいた。
 お店の入り口にかかっている、店名だけの粋な暖簾を分けて半分からだを差し入れると、「少々お待ちください」と若い女性の店員さんに言われる。
 入り口まえのエレベータホールで待っていたら、他の予約客らも集まってきた。
 12時ちょうど、さきほどの店員さんが現れて、「どうぞ」と我々を店内に招じ入れる。
 その途端、
「いらっしゃい!」
 気合いの入った大きな声に迎えられた。雑誌などで顔を見たことのあるこの屋の主だ。
 白木のカウンターに並んだ黒い椅子は13〜14脚くらいあるだろうか。その席のひとつに案内される。 
 内装はどこまでもシンプルで凛としたたたずまい。なにより眼をひきつけられるのは、カウンター内の厨房にきれいに並べられた野菜たちだ。ナス、アスパラガス、シイタケ、レンコン、どれもリッパである。わけても、サツマイモの大きいことといったらびっくりする。それらは、料理の素材であると同時に、この店の唯一の装飾品でもあるのだった。

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