この『荒馬と女』は、本編を見る遥か以前、日本版エスクァイア誌の映画特集で撮影風景の写真を見ていた。本編とおなじくモノクロのスチールで、スターらの表情もだけれど、背景となっている広々とした荒野にひどく惹かれた。インゲ・モラスというオーストリア出身の女性写真家の手によるものだという。
そうして、映画のほうをようやく最近になって見たわけだが、そこにはあの写真とおなじ荒野(劇中、モンゴメリー・クリフトは「月の風景のようだ」と言い、マリリンは「衣擦れの音が聞こえるくらいに静か」だと言っている)があった。
『荒馬と女』は、ストーリーがあるようなないような映画であるけれど、マリリン・モンローが演じるロズリンから連想したのは、まさに同年に制作された『ティファニーで朝食を』のホリーであった。
その時々で傍らにいる男に深く同調してしまうゆえに奔放にもはかなくも映るロズリンは、自由を求めるあまり愛されることを拒絶するホリーの陰画である。
『荒馬と女』のシナリオを書いたのは、マリリンの夫のアーサー・ミラーであるが、当時ふたりの仲は冷え切っていたという。
後に離婚したミラーの再婚相手は、『荒馬と女』の撮影現場で出会った写真家のインゲ・モラスであるわけだから、やはりいわくつきの映画であるとしかいいようがない。
