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ぴー吉 上野 歩 / イ 
第141回 食卓日記(14)〜名古屋で出会ったパスタと新築駅の見学会の巻〜・・・P3

挿絵 *月*日
 日本列島全体がきびしい寒波におおわれた日、コートの襟を立て、マフラーにあごをうずめるようにして帰宅。熱い風呂に浸かって、夕餉はおでん。太いタコの足が入っているのがうれしかった。
 湯上りで火照ったからだに冷たいビールがしみる。
 箸休めの菜の花のおひたしに、遠く近い春を思う。
 翌朝、味がよくしみて、くたくたになった残りのおでんで食べるご飯がまたうまいのだ。

*月*日
 休日の昼下がり、ひとり家にいて、ビーフシチューをつくっていた。
 先日、衛星放送でなにげなく観た『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』という’90年代の映画で、盲目の退役軍人を演じたアル・パチーノが素晴らしく(この演技でアカデミー主演男優賞受賞)、若き日の姿が観たくなった。で、『ゴッドファーザー』のDVDを眺めながら、牛スネ肉を2時間ほどかけてじっくり煮込む。
 ビーフシチューができあがると、いったん冷まして味を落ち着かせるために外出。最寄りの西武池袋線石神井公園が高架駅となり、そのオープン前の見学会が開催されているので、のぞきに行く。
 たいそうな人出である。近隣住民に混じって鉄ちゃんの姿(すぐにわかる)も散見される。
 エスカレータでホーム上へ。新宿の高層ビル群が見渡せる。朝の早い時間なら秩父の山々も見えるだろう。
 希望者は線路上に下りることができるのだが、全長210メートルのホームの端から端まで行列ができている。40分ほど順番待ちするというが、周囲の風景をゆっくり眺めるつもりで並ぶ。
 屋根を支える柱が樹木の幹をイメージしているというのは、ホーム上からも望むことができる石神井公園の森がモチーフになっているのだろう。白い鉄骨の幹である。
 立派な駅だ。さすが急行停車駅で、エスカレータも階段も広い。しかし、旧駅舎のひなびた味わいも忘れがたい。
 西武鉄道のマークがはいった黄色いヘルメットを渡され、いよいよ軌道上へ。白い玉砂利を踏みながらホームの端まで歩き、そこから真っすぐに伸びるレールを眺めていると遙かな思いがした。

 帰宅して赤ワインを飲みつつ、自作のビーフシチューを味わう。
 ローズマリーの味が立ち過ぎているのは、ブーケガルニにローズマリーを2本つかったからだ。ベランダにある鉢からハサミをつかって摘んだところ、2本切ってしまったのである。もったいないのでつかったが、味は正直だ。

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