翌日は、ますのすし本舗・源(みなもと)の工場見学をする。
学生時代、富山に帰省していた先輩が土産に買ってきたますのすしを肴に酒盛りして、こんな旨いものが世の中にあったのかと思ったっけ。
ますのすしの製造過程をガラス越しに見ると、輪っぱに笹の葉を敷き詰めるなど、手練が要求される作業がそちこちにある。
また、パッケージの鱒(ます)のイラストが、洋画家の中川一政氏の手によるものであるのをはじめて知った。中川氏といえば、向田邦子が遺したいちばん長い小説『あ・うん』の装丁を担当している。僕が好きなふたつのものに共通点があった。
昼は源製の二段重の弁当。
調理長による品書きが付いている。内容はつぎのごとし。
| 一の重 |
鰤の味噌焼と酢蓮根 蛸のうま煮、枝豆添え ますひれのうま煮と昆布巻き かつお風味のブロッコリー 玉子べっこう、昆布かまぼこ 氷頭なますと大根のお酢和え 梅貝と銀杏串 ほたるいか甘露煮 白海老浜焼き 大学いも |
|---|---|
| 二の重 |
里芋の胡麻味噌掛け きんぴら牛蒡 南瓜、竹の子、蕗、椎茸の煮物 ますのすし 赤しそ、青しそのひさごご飯 らっきょうの赤ワイン漬け |
どうです、豪華でしょう?
食後は、湧水の町・生地(いくじ)を散策する。
黒部川の伏流水が、そちこちでこんこんと湧き出る、どこか懐かしい佇(たたず)まいの町である。
老舗の昆布屋さんで、とろろ昆布をまぶしたおむすびと昆布茶をご馳走になったり、かまぼこ屋さんでは、この地方ではお祝いごとに欠かせない鯛のかまぼこづくりの実演を見学させてもらったりする。
酒蔵で吟醸酒を試飲させてもらい、口中の酒のぬめりを洗おうと、ならびにある清水(しょうず)小屋で湧き水を飲もうとしたら、近所のおばちゃんに声をかけられた。
庭で増えすぎたから、と虎の尾とも呼ばれるサンスベリアの株をもらった。
おばちゃん、虎の尾は、鉢に植えて、我が家のベランダで元気にしてますよ。“生地のトラ”と名づけました。
