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ぴー吉 上野 歩 / イ 
第147回 日帰りバスツアー(5)〜渋滞の果てに編〜・・・P3

挿絵  午前の行程だったトマト摘みに向かう。
 6個までトマトを持ち帰ることができるという。
 僕はまるごとの大きな赤いトマトをイメージしていたので、ずいぶんと持ち重りがするなあと思った。
 ところが、ここで積むのは、ルージュボルドーと、ピッコラカナリヤという地中海トマトを品種改良したという小粒である。
 ルージュボルドーは名前のとおり濃い赤をしていて、ピッコラカナリヤもまた名前のごとくカナリヤのような明るい黄色である。
 農園を案内され、しゃがんで葉のあいだにあるぷっくりとふくれたよさそうな実を摘むのだが、僕はうまくヘタを残したまま摘み取ることができなくて、まさにヘタである。
 味見してみると、いずれの種も皮がかたく、フルーツのように甘い。ピッコラカナリヤのほうは、ちょっとマンゴーのような香りがした。
 農園に来ている中国からの研修生が配る、採りたての生トウモロコシをかじる。

 立ち寄った土産物屋さんで、山盛りで1000エンの干しシイタケをオバチャンの挑戦的な呼び声に乗って買い、バスで山梨県・御坂町に移動して桃狩りの農園へ。
 御坂といえば、太宰治『富嶽百景』(名文である)の舞台だ。
 ところで、朝の渋滞が影響し、さらには帰路も渋滞が予測されるところから、ここでは自分が選んだ桃を1コ選んで刈り取るという時間がなくなってしまった。農園側で用意した桃を1コ持ち帰るだけで、あとは桃の食い放題会場へと案内される。
 しかし、ここで出された桃というのが、桃が嫌いになってしまうのではないかというくらいにまずかった。
 そういえば、この半野外のバーベキューレストランには見おぼえがある。かつて来たバスツアーで、カニちらしの昼飯を食べたところではないか! あの時も、「どうして海のない山梨でカニちらしなんだろう?」という疑問を抱いたものだ。なるほど、申し訳程度のカニと、これでもかというくらいの桜でんぶがのった代物だった。しかも、春先とあって、ここはひどく寒かった。
 全体に粗悪なコースもあれば、ここはよかったけど、あそこはいまひとつといった具合なコースも多々ある。けれど、旅行会社からチラシが送られてくると、僕はまた次に参加するバスツアーを物色してしまう。

 きょうのバスの座席は、運転手さんのすぐ後ろで見晴らしがいい。どうやら赤くテールランプが連なる渋滞見物をしながら帰ることになりそうだ。
 大きなバックミラーに陽焼けして、やわらいだ自分の顔が映っていた。

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