梅雨はホタル狩りの季節であるが、雨の日となると、ホタルの出現数は激減するという。
長野県は伊那盆地の北端にある辰野の町にホタルを見に行こうというバスツアーの前日、僕は馴染みの小料理屋さんで飲んでいた。
この日は、仕事で所沢に出かけたついでに、駅前に残る西武鉄道の車両工場跡を鑑賞してきた。梅雨の晴れ間の太陽がじりじりと照りつける大鉄傘に“兵(つわもの)どもが夢の跡”といった寂寥と凄惨な風情を堪能したものだ。
しかしなにしろ暑かった。で、西武池袋線に乗って石神井公園駅まで帰ってきて、自宅にたどり着くまえに、こうして途中にあるお店の暖簾をくぐってしまったというわけだ。
きんと冷えたキリンで喉を潤し、香りのよい枝豆をつまむ。
「辛味大根が入ったんで」という板さんの言葉に、釜揚げしらすと和えてもらい、さっぱりといただく。
マコガレイの刺身をアテに冷やを飲みながら、あしたホタルを見に行くんだと言ったら、店のひとたちから天気を心配された。そういえば先々月、黒部アルペンルートに出かける前の日にもここで飲んでいて、天気予報がかんばしくなかった。いや、昨年、やはりバスツアーで谷川岳に行く前日にもここにいて、あの時には台風が近づいていたっけ(第151回『日帰りバスツアー(6)〜嵐のなかを編〜』)。
明日の東京は曇りのち雨、長野は曇りで降水確率は30パーセント。