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ぴー吉 上野 歩 / イ 
第199回 食卓日記(21)〜ゲラ校正と日本海の空の巻〜・・・P3

*月*日
 今年も年末の旅行の日になってしまった。萩、津和野から北九州まで回る。下関のフグを食べて温泉に入ろうというわけだ。
 夜には宿で年賀状を書く。そして、もちろん常にゲラのことを考えているのである。

 冬至に日本海を眺めながら露天風呂に浸かる。雪のちらつく鉛色(なまりいろ)の空は、しかし、高いところでは薄青い晴れ間も覗いている。ドラマ『夢千代日記』で見た山陰の空である。

*月*日
 翌朝は萩の町で、古い丸型ポストに書いた年賀状を投函する。
 その後、1977年の松竹映画『八つ墓村』のロケ地となった日本最大規模といわれる鍾乳洞・秋芳洞(あきよしどう)を見学する。「祟(たた)りじゃ〜」が当時流行語にもなった、あの映画を久しぶりに観たくなった。もちろん仕事場にある棚のBDコレクションに入っている。

 関門海峡を渡って、夕暮の門司港をそぞろ歩き、ライトアップされた洋館を眺める。レトロ地区に建つタワーマンションの最上部は展望台になっていて、そこから関門海峡に浮かぶ巌流島を眺めることができる。御存じ武蔵と小次郎の決闘の舞台である。
 実は3月に刊行される小説は、『宮本武蔵』をモチーフとしていて、因縁を感じる。

 その晩泊ったホテルからはテーマパークのイルミネーションが眺められ、花火まで打ち上げられてクリスマス気分が味わえた。
 帰路、羽田空港から乗ったリムジンバスからも東京タワーのクリスマスライトアップが見えた。今年ももう残すところ数日である。
 22時過ぎに帰宅して、萩かまぼこをつまみにウイスキーの水割りを飲む。関東の蒸すかまぼこと異なり、焼き上げる萩かまぼこは、ピートの埃っぽい香りのするスコッチに合う。
 明朝は、萩焼の工房で買った急須(きゅうす)で茶を淹れるのが楽しみだ。

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