ふじた:『墨田区吾嬬町発ブラックホール行き』『わたし、型屋の社長になります』など町工場シリーズもそうですが、上野さんの作品はエンターテインメントな一方で「仕事」をキーワードにされてますよね。
上野:現在、「お仕事小説」と呼ばれるエンターテインメントノベルを中心に発表しているわけですが、その合間に別ジャンルの小説にも挑戦したいな、と本作に着手しました。でも、『探偵太宰治』は、なぜ太宰が小説の執筆に取り組むようになったかを描いた「お仕事小説」でもあるんですよね。一方で、「探偵としての太宰治」というお仕事小説でもあります。
ふじた:『探偵太宰治』の中の「お仕事」の描かれ方とはなんでしょう?
上野:日本人は勤勉でとても働き者ですよね。日本人にとって労働は神さまなんじゃないかと思えるくらいです。一方で「仕事」はおカネを稼ぐための行為でもあるわけです。『探偵太宰治』は、資産家の息子である太宰が非常におカネに苦労するようになって、それゆえに作家として探偵として仕事にはげもうとするお仕事小説なんです。
ふじた:会社に神棚があったりしますもんね。お客さまは神さまですともいいますし。それにしても、おカネに苦労して作家や探偵という仕事を選ぶというのが面白いですね。どっちもカッコいいけど稼ぐには大変そうだからなあ〜。
上野:大変です(実感を込めて)。