ふじた:いつものように緻密な描写で、取材にも力が入っていることが伺えます。取材中の思い出深い出来事を教えていただけますか?
上野:自宅でひとりで原稿書いてる時と違って、僕にとって取材は基本的に楽しいものなんですよね。理容学校の教室に行くと、「いらっしゃいませ!」って大きな声で生徒さんたちに迎えられて焦ったり、従来のシェービングを進化させたメンズエステを受けたり、わきの下のあたりにあるリンパのツボを責められてもだえ苦しんだり……。レディースシェービングの専門店は男子禁制で、スタイリストの女性に廊下でお話を伺いました。
ふじた:リンパのツボ責めですか、それは興味ありますね(笑)。『キリの理容室』は、若い理容師の卵に読んでほしいですよ。きっと、「あるある」ってなるんでしょうね。よい師匠や人々に恵まれて、ちょっとキリがうらやましいとも思うかもしれません。