上野:僕はお仕事小説を中心に書いてるので、だいたいどれにも、師匠に当たるキャラクターが登場します。“マスター・ヨーダ”って呼んでて、全登場人物のピラミッドの頂点に位置する人物です。今回は、キリが修行するバーバーチーの女性オーナー、チーこと千恵子がそれに当たります。
ふじた:あ、まさにそれなんですよ! 僕は『キリの理容室』って『スター・ウォーズ』旧三部作っぽいと思ってたんです。チーちゃんはまさにヨーダ。主人公の神野キリはもちろんルークですね。キリの友人、氷見アタルはハン・ソロ。そしてキリの母、巻子はダース・ベイダー。C-3POは誰だと思います?
上野:えーと、もしかして、キリの幼馴染みのジュンペーくん?
ふじた:大正解! 僕のメモではチューバッカ、R2-D2、ジャバ・ザ・ハットと登場人物全員置き換えていますよ。そうなるとキリのレザー(西洋カミソリ)がライトセーバーにしか思えなくなってくるというね。僕が誰を誰と思ったかは読者のみなさんのお楽しみに……ならないか(笑)。
上野:なるほど、『スター・ウォーズ』か。実は、『墨田区吾嬬町発ブラックホール行き』は『スター・ウォーズ』っぽいなとは考えてたんですよね。それも、カイロ・レンを主人公とするエピソード7からの新シリーズに。父と娘の話でもありますしね。そういう意味で、『墨田区吾嬬町発ブラックホール行き』を書いてるのと同時期に着想を得た『キリの理容室』は双子の姉妹といえるかも。
ふじた:うーむ、深い! これは『キリの理容室』から上野さん作品に入られた方は『墨田区吾嬬町発ブラックホール行き』を読まずにいられません。これから上野さんのことを心の中でルーカス師匠と呼ぶことにします。
上野:いや、あなた……そんな……。
(後編につづく)